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「乳糖不耐症」と「牛乳アレルギー」


2017年11月01日

「牛乳が苦手」という方は少なくなく、おなかがごろごろする、下痢するということをよく聞きます。しかし、2種類の原因があることをご存知でしょうか。

「乳糖不耐症(にゅうとうふたいしょう)」は、牛乳の中に含まれる「乳糖(ラクトース)」を消化吸収のため分解するラクターゼという消化酵素の、小腸での分泌不足が原因で起こります。消化不良・腹部不快・腹痛・下痢・おならなどの症状がでます。

症状には個人差があり、少しならいいけど、たくさん飲むとおなかをこわすという方がいます。量が多いとラクターゼの分泌が間に合わないと考えられるので、数回に分けて飲めば症状が出にくいでしょう。また、ホットミルクは大丈夫だけれど、冷たいのはダメという方もいます。温かいと下痢しにくいのは、体温に近い方がラクターゼの活性が上がることや、胃腸への刺激が少ないためではないかと考えられます。

一般に、大人になるとラクターゼ分泌が減少することが多いため、子供のころは冷たい牛乳も平気だったけど、大人になってからいけないという人がいるのも特徴です。逆に子供のころから乳製品を続けてきた人は、なりにくいといわれています。市販されている、乳糖をあらかじめ分解したり除去した「おなかがごろごろしにくい牛乳」で牛乳に慣れていくうちに、だんだんラクターゼの分泌が増え、普通の牛乳も飲めるようになることもあるようです。

ごくまれに、先天的にラクターゼを持っていない先天性乳糖不耐症という病気があります。赤ちゃんが母乳・粉ミルクを飲むとすぐ下痢してしまうという深刻な状態ですが、診断さえつけば、特殊なミルクや、ラクターゼ製剤を使うことで、対処できます。

さて、もう一方の「牛乳アレルギー」ですが、これは食物アレルギーのひとつです。原因となる食物を摂取した後にアレルギー反応が起こり、腹痛・下痢・じんましん・呼吸困難・アナフィラキシー反応などが起こる、より深刻な病態です。原因物質は、牛乳などの食品に含まれる、カゼインやβラクトグロブリンなどのタンパク質で、乳幼児に多く、3歳以降に自然治癒することが多いとされています。

どちらの場合も、牛乳を飲むと腹痛・下痢などの症状が出るという点で似ていますが、「おなかがごろごろしにくい牛乳」では症状がでにくいのが「乳糖不耐症」です。もし「牛乳アレルギー」が疑われる場合は、医療機関で相談してみてください。
広報委員会  野村邦浩