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氏名と振り仮名― 一人に二つのカルテができる? ―


 令和5年6月2日、戸籍法(昭和22年法律第224号)の一部改正を含む「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和5年法律第48号。以下「改正法」)が成立し、同月9日に公布されました。これにより、従来は戸籍に記載されなかった氏名の「フリガナ」が、新たに公的に登録されることとなり、令和7年5月26日に施行されました。 日常診療では、子どもたちの診療や予防接種の際に名前を呼ぶ場面で、読み方に苦労することが少なくありません。母子手帳に振り仮名が記されていないことも多く、そのたびに付き添いのご家族に尋ねることになります。「どうしてこういう読み方に?」と不思議に思うのは、私が年齢を重ねたからでしょうか。
 しかし、読み仮名の問題は単なる戸惑いにとどまりません。最近では、マイナンバーカードに紐づけられた保険証の読み仮名が間違って登録されている例が見られます。たとえば「ズ」と「ヅ」、「ジ」と「ヂ」の取り違え、拗音の「チャコ」と「チヤコ」、「ジュウ」と「ジユウ」、「ショウ」と「シヨウ」、あるいは促音の「キッコ」と「キツコ」などです。
 この入力間違いがあると、過去に既存の保険証で作成したカルテがある人が、新たにマイナンバーカードでの保険証で受診すると、別人と判定されてしまい、一人の患者さんに二つのカルテが発生するという事態が起こります。電子カルテの設定上統合処理ができず、結局は手作業で修正するしかありません。
  診療の現場としては、氏名に正確な読み仮名が添えられていることは大変ありがたいことです。せっかく法律で戸籍にフリガナが追加されるのですから、公的機関において入力ミスを減らす工夫がなされ、現場の混乱が少しでも軽減されることを願います。