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明日に架ける橋 ―開業医と勤務医をつなぐ架け橋は医師会―


 トランプ時代になり世界の分断が際立つ。医療現場でも、開業医と勤務医の間には、見えない溝が横たわる。開業医の世界はカトリック的である。医師会という共同体に属し、地域の「教父」としてその土地に根ざし、住民の健康を包括的に見守り、健診や予防接種、学校医活動などを行い、地域医療の基盤を支えている。一方、勤務医の世界はプロテスタント的である。彼らは個人の専門性を追求し、日進月歩の医学知識を「聖書」と捉える。技能を磨き、論理的な判断で疾患と向き合い、高度医療の最前線を牽引する。しかし、その個人主義的な思考ゆえか、地域との繋がりや医師会への関心は希薄な傾向が見られる。現代医療において、開業医と勤務医は相互依存的である。地域医療の入り口を担う開業医がいなければ、専門医療の門は開かず、高度化する医療の恩恵は地域住民に行き渡らない。また、安定した患者を開業医へ逆紹介しなければ、病院の外来はパンクする。斜陽と囁かれる医師会が再び輝きを取り戻すためには、カトリック的な開業医の共同体意識と、プロテスタント的な勤務医の個人主義・専門性をいかに融合させるかが鍵となる。教皇選出会議(コンクラーベ)の後に、新ローマ教皇レオ14世は「対話と出会いを通して橋を架けよう」と語っている。医療界においても「明日に架ける橋」を築くべき時が来ている。医師会には、分断を乗り越え、開業医と勤務医を結びつけ、より質の高い医療をすべての人に届ける未来へと導く役割が求められている。