最期を記すということ ―虚偽診断書事件について思う―
数ヶ月前、青森県で元病院長らが入院患者の殺人を隠蔽したとして逮捕された事件は、医療関係者にとっても衝撃的であった。死因を「肺炎」と偽り、遺族に虚偽の死亡診断書を渡していたという。外傷があるにもかかわらず肺炎と記載するのは不自然であり、なぜそこまで隠蔽する必要があったのか、疑問は尽きない。また、病院からは「肺炎」とする死亡診断書が多数押収されており、それらはいずれも認知症の疑いがある同一医師の名義で作成されていたという。周囲の医療スタッフは異変に気づかなかったのかも気になる点である。
私は死亡診断書の作成には特に緊張感をもって臨んでいる。名前の旧字体の有無、生年月日、死亡日時、死因とその期間など、いずれも確認を怠れない。在宅医療や高齢者施設では検査に限界があり、「老衰」と記す際の期間表記にも悩むことがある。診断書は医師の責務であり、虚偽は決して許されるべきではない。事件の全容解明と再発防止が強く望まれる。診断書の作成には、今後も慎重に、丁寧に向き合いたい。