読本52
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③ 前頭側頭型認知症 前頭側頭型認知症は、タウタンパク、FUS、TDP-43などの異常なタンパク質が前頭葉や側頭葉に溜まることにより、前頭葉と側頭葉の機能低下から始まる病気です。前頭葉にはさまざまな役割がありますがその一つとして、行動や欲求を制御・抑制するという働きがあります。この抑制は他人の迷惑になるような欲求を抑えて、社会生活を送るためにとても大切です。 前頭側頭型認知症ではこの抑制が壊れてしまい、他人のことを考えることができずに、気持ちのおもむくままの行動をしてしまうという症状が出てきます。例えば、店先にあるお菓子が欲しいと思ったらそれをお金も払わず持ってきてしまうなどの、反社会的な行動です。病識がないため本人にはまったく悪気がないという点が万引きなどの犯罪行為とは異なります。また同じ行為を繰り返す常同行動という症状も前頭葉の機能低下でみられます。これはどんな天気でも毎日同じ時間に同じコースをまわって同じスーパーに行って同じものを買って帰ってくる、といったような症状です。 一方、側頭葉は言語をあやつるのに大切な脳です。この病気で側頭葉が壊れることで、聞いた言葉の意味がなんだかわからなくなったり、言葉がうまくでてこなくなって周りから見て何をしゃべっているのかわからなくなったりする、失語という症状がでてきます。前頭側頭型認知症の早期の段階では言葉や行動の異常がみられても、記憶や計算、日付や場所といった見当識などの認知機能は保たれているため、診断が遅れてしまうことがあります。また比較的若い人に発症しやすいという特徴もあります。◉脱抑制周囲を気にせず我が道をゆく行動反社会的な行動になりやすい◉常同行動同じ行動を繰り返す◉失語言葉の意味が理解できない言葉が出てこないあ…う…特徴 8わたくしたちの健康読本

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