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若い人の胃の不調~機能性ディスペプシア~


2023年07月01日

1.機能性ディスペプシアとはなに?
A1.機能性ディスペプシアとは、中学生、高校生などの若い方の多く発症される病気で、胃カメラなどの胃の検査を行っても、胃に異常がないことを確認する必要があります。食事の際に、食べ始めるとすぐに満腹となり食べられなくなります。胃の痛みやみぞおちの焼ける感じ、胃もたれの症状が起こります。このような症状が数か月にわたり慢性的に続くと、機能性ディスペプシアの可能性が高いです。コロナ下のストレスや黙食などで増加傾向です。
 
2.原因としてはどのようなことが挙げられるのでしょうか?
A2.原因は、ストレスによって胃に働く自律神経の乱れです。自律神経は交感神経、副交感神経の2系統があります。交感神経は興奮するときに働き、胃の動きを抑えますし、副交感神経はリラックスするときに働き、胃を活発に動かします。強いストレスが長い期間続くと、自律神経の働きが乱れることで、胃の動きが乱れて症状が出現します。特に成長期の若い方は自律神経の発育が未成熟で、症状が出現しやすいです。
 
3.具体的にはどのように乱れるのでしょうか?
A3.通常は食べ物が胃に入ると、上の三分の一が緩んで食べ物を受け入れてくれます。下三分の二が活発に動いて食べ物を胃の外に出していきます。ところが機能性ディスペプシアの方は、動きが逆となり、食べ物が入ってくると本来緩むはずの部分が緊張して食べ物を受け付けなくなり、すぐに満腹となってしまいます。また活発の動くはずの部分が動かなくなり、いつまでも胃の中に食べ物が残り、胃もたれが起こります。胃の中に食べ物がいつまでも残ることで、胃酸がいつまでも分泌されるため、胃の痛みや焼ける感じが起こりやすくなります。
 
4.治療はどのように行うのでしょうか?
A4.まず大事なことは、内視鏡検査を行い、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの胃の異常がないことを確認します。胃酸を抑える薬や胃の動きを改善する薬を服用していただきます。大事なことは、成長期のお子さんに多い病気で、自律神経が成長するにつれて改善する可能性が高いのであまり悲観されずに根気よく治療を続けることです。またストレスが原因のことが多いので、消化器の薬で改善されない場合は、ストレスに対する治療も必要となることも多く、心療内科的なアプローチを考慮する必要があります。特に若い方に多い病気で、心配される方が多いですが、成長することや環境の変化で軽快されることが期待できます。長くかかる方は、数年間は治療を続けることもありますが、どこかで薬の服用はやめることができます。かかりつけの医師と相談しながら、上手に対応していきましょう。

                                            広報委員会  田中昌彦