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―医師の長時間労働は医師の判断の的確性を損ねる可能性が高い―

「医師の働き方改革に関する検討会」の報告書 ―医師の長時間労働は医師の判断の的確性を損ねる可能性が高い―


2017年の医師の長時間労働の実態調査などを受けて設置された「医師の働き方改革に関する検討会」は、地域医療を担う勤務医や研修医について、残業時間の上限を、年1860時間に決定される模様であることが分かった。これは、一月当たりに換算すれば、月155時間であり、いわゆる「過労死ライン」の約2倍である。厚労省は同時に、終業から次の始業まで一定時間の休息を確保する「勤務間インターバル」を9時間、当直などの連続勤務を28時間までとすることを義務づけるとする健康を維持するための措置を提示している。

多くの医師は献身的に担当患者の治療に当たっているが、その内容は、直接患者に向き合う外来業務や入院患者の診察そしてカルテ整理に加え、内視鏡やカテーテルによる検査や処置、手術室における治療、また、それらについての患者や家族に対する説明と同意書の作成など多岐にわたっている。さらに学会活動や新たな治療技術の修得、疾患の背景にある病態生理学的知識などの研鑚に費やす時間など、勤務時間と考えるのか否かについて、境界の不鮮明な時間の解釈も大変複雑である。

医師は、医師である前に生身の人間である。的確な医療には的確な判断力を持った状態の医師が当たらなければならない。過労死ラインを超えるような長時間の残業に従事する中での診療業務には、過労のため判断の的確性を欠くこともあり、大きな危険性が潜在していると考えるべきである。医師自身のためにも患者のためにも、現行の長時間勤務体制を見直すことが急務であろうと考える。