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―NIPT(新型出生前診断)はどこまで進むか―

医療の進歩は本当に人間を幸福にするのか ―NIPT(新型出生前診断)はどこまで進むか―


NIPTについて日本産婦人科学会は3月3日に倫理面から臨床研究に限定してきた指針を変更し、一般診療として実施することを正式に決めたとニュースで発表されました。

DNAのスクリーニングである次世代シーケンサーは2000年前後から技術が開発されました。2007年には一人のDNAスクリーニングをするのに67日間を要し、費用は1億5千万円かかっていましたが、たった8年後の2015年には検査期間2週間、費用は9万円。ここ、1-2年のうちに民間医療機関でNIPTを行うことが数多く見られ、いわゆる遺伝子ビジネスです。―「カウンセリング不要、結果は郵送で」―

2012年8月にNIPT(Noninvasive prenatal genetic testing:無侵襲的出生前遺伝学的検査)が登場。妊娠した母体の採血という簡単な手技で、胎児の染色体の数的特徴が診断できます。

シンガポールではNIPTについて、産科医が母親に説明することを義務付けられており、ほぼ全ての妊婦さんが検査を受けています。近い将来、ダウン症の人はいなくなるのではないかと考えています。それに、あなたのお腹の子どもさんは自閉症になる確立が○○%、学力の程度は○○%、ガンの発生率は○○%とAIによって計算された世界がくるのは確実でしょう。

この科学の発達によって生まれてくる赤ちゃんの選別思想はヒトラーの優生思想の下で多くの社会的弱者といわれる精神障害を持った人々が次々と処刑されていった思想といったいどこが違うのか、一時立ち止まり、熟考する時のように思います。