TOP > 長野県にお住まいの皆さまへ > 長野県医師会の活 > けんこうの小径 > 若里だより > 親を亡くした子供たちに光を 
―「施設」から「家庭の暮らし」へ―

親を亡くした子供たちに光を ―「施設」から「家庭の暮らし」へ―


21世紀も世界の各地で戦争があり多くの孤児たちが生きる場を失っています。現在においてもHIVによる孤児の問題は深刻です。アジアやアフリカにおいてHIV孤児がたくさんいます。私の友人もタイでHIV孤児の施設を運営していました。日本において戦後、戦争孤児が大きな社会問題でした。しかし、孤児の問題は過去ではなく現在の日本の大切な問題であり、課題です。

親の死亡や病気、離婚、家出、被虐待等の様々な事情で家庭での養育が困難な乳幼児が多くいます。日本の各地に乳児院があり施設でのケアで生活している乳幼児は日本だけでも35,000人います。その数の多さに驚きを覚えています。日本では、施設にいる子供たちのうち里親制度により新しい家族のもとで、親の愛情の下、家庭の中で成長できる子供の割合は僅か10%程度です。約9割の子供たちが成人になるまで施設ケアを受けています。

世界の状況はと言うと、隣の韓国は40%、イギリスでは70%以上、オーストラリアではなんと90%以上の乳幼児が新しい親元で家族とともに育っています。日本でも乳児院での施設ケアから新しい家庭で子供たちが成長していく「フォスターホーム」(うえだみなみ乳児院)の運動が信州から始まろうとしています。ブルガリアでは施設のみで育った子供に何らかの障害が残る確率がとても高いという報告がなされています。

医師会の先生方にも虐待や差別を受けやすい乳幼児たちに新しい光が当たるように信州でその運動が始まっていることをどこか心の片隅にとどめておいて頂ければ幸いです。