健康読本53
9/20

 治療の第一歩は、医師と良い関係をつくることです。こころの病気の治療は、ときに長くかかることがあります。医師を信頼できるならば、長引く治療を受け続けることができるでしょう。逆に、話をよく聞いてくれない、苦しみを理解してくれないという気持ちをもっていると、医師の言葉や処方された薬を受け付けたくなくなりますね。だからといって、「この先生とは合わない」とか「この先生にかかっていてもなかなか治らない」と簡単に決めつけてしまい、ドクターショッピングをするとかえって治りにくくなります。なぜ良好な関係が築けないのか、主治医を変える方がよいのかは、慎重に考えてください。 体の病気の治療でもそうですが、患者さん(そしてご家族)の病気への理解が大切です。精神疾患は個人差が大きいので、同じ病名(病気の種類)であっても、程度や性質が異なるので、病気との向き合い方や治療手段が異なります。その診たてと治療方針について、主治医から説明を受けることが大切です。筆者は、必要に応じて、一般の読者向けに書かれた病気の解説書を読むことをお勧めしています。 また、治療への協力が必要な場合もあります。たとえば脳卒中を起こした直後は絶対安静にして、治療を医師にゆだねるしかありません。しかし命が助かり、麻痺した手足のリハビリが必要な時期になれば、患者さんの努力も必要です。リハビリは決して楽ではありませんが、諦めたならば回復が遅くなります。こころの病気の治療でも、症状が軽快し、社会復帰に向けたリハビリが必要な時期には、医師のサポートやアドバイスを受けながら患者さんが、無理のない範囲で、頑張ることが必要なときもあります。楽ではありませんが、規則正しい生活や必要な服薬を続けることも大切です。❶ 精神療法 前述しましたが、精神科では診断名を決めるために面接という方法が用いられます。そして、治療の基本も面接です。この精神科医が行う治療的な面接を精神療法といいます。精神療法では、傾聴、共感、支持の4こころの病気はどのように治療するのでしょうか9こころの病気

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る