健康読本53
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❷ 向精神薬(こうせいしんやく)による治療 向精神薬とは、こころの病気の改善に用いる薬物です(文献2)。薬が精神症状による苦痛を和らげるだろうと判断される場合には、向精神薬の服用を勧めます(表4)。たとえば、統合失調症の患者さんを苦しめる幻覚や妄想を和らげたい場合、激しい興奮や衝動を自分で抑えられなくなっている場合、重いうつ病(躁病)や強い不安・恐怖に圧倒され普段の生活ができなくなっている場合、何週間も眠れない、食事がとれない状態が続き全身が衰弱している場合などに効果のある薬が開発されています。 一度薬を飲むと一生飲み続けなければならない、薬物依存になる、認知症になりやすい、こころの病気は強いこころをもてば治るなどのメッセージがネットには大量に流されています。これらの情報に惑わされることなく、向精神薬についての正しい知識を知っておきましょう。 「薬を使わないで治したい」というご希望もお聞きします。逆に「薬を使わないで治療してみましょう」とこちらから提案することもあります。しかしながら、上記のように症状が重いときは、服薬をお勧めします。また、再発を予防するために長期的に服用した方がよい場合もあります。高血圧症では、薬により血圧をしっかりと一定にし続けることで、脳卒中で倒れるリスクを減少させることができます。同じようにこころの病気の場合にも、長期の服薬により再発を予防して病気の経過を改善してくれる場合があるのです。表4 向精神薬の種類と使用するこころの病気   ●詳しくは、文献2などの本を参照してください。種 類心 の 病 気不眠症の改善に用いる 睡眠薬抗うつ薬抗精神病薬こう せい しん びょう やく抗不安薬こう ふ あん やく気分安定薬 き ぶん あん てい やく主としてうつ病。なかには、パニック症、強迫症、社交不安症などに用いる薬剤もある主として統合失調症。一部の薬は双極性障害、難治性うつ病にも効果がある双極性障害に効果がある(リチウム、バルプロ酸など)強い不安症状の緩和に用いる11こころの病気

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